イケメン、お届けします。【注】返品不可
女性は手にしていた紙袋を男性に押し付け、慌ててオオカミさんに駆け寄った。
「……あ、お母さん!」
彼らの叫びで目を覚ました男の子は彼女を見るなり笑顔になる。
「もー、あんたどこ行ってたのよっ! 試着している間にいなくなって……すっごく探したんだから! ご迷惑をおかけして、すみませんでした」
「いえ。お母さんが見つかってよかった」
オオカミさんは、彼女の腕に男の子を引き渡すと、大量の紙袋を抱える人のよさそうな男性に会釈した。
「お父さんですか?」
「はい。息子がご迷惑をおかけしたようで、すみませんでした」
(え。ど、どういうこと? 実父と養父ってこと?)
この三人の関係がよくわからずに、戸惑う。
「無事ご両親が見つかってよかった。マナトくんは、なぜかわたしのことをお父さんだと勘違いしたようで、いきなりパパと叫ばれてびっくりしましたが。どこか似ているところがあったんですかね?」
オオカミさんが苦笑まじりに言うと、マナトくんの母親はさっと青ざめ、「ご、ごめんなさいっ」と頭を下げた。
「わたし、ネットで見つけたイケメンの写真を『イケメンフォルダ』に入れて……日々の癒しにしていて。それをマナトに見つかって。『パパ』が若い頃の写真だってことに……」
「「は?」」
わたしとマナトくんのお父さんの声が見事にはハモる。
オオカミさんはと言えば、あまりのことに唖然として声も出ないらしい。
「つまり、その誰だかわからないイケメンとオオカミさんがそっくりだったと……?」
「はい。本人じゃないかと思うくらい似てるんですよっ!」
勢い込んで訴えたマナトくんのお母さんをお父さんが叱りつける。
「おまえ、何やってんだよ!? 見知らぬ男がパパだなんて言われたら、マナトが混乱するだろうっ! そもそも、コレが、コレになるなんて、どう考えても無理があるだろっ!」
オオカミさんを指さし、次いで自分を指さしたマナトくんのお父さんの主張は、もっともだ。
彼も、どちらかといえば整った顔立ちではあるが、オオカミさんほどではないし、体格からしてぜんぜん違う。
「だってっ! わたしがアイドルとか、俳優とか、イケメンに癒されてるのがムカツクって言ったじゃないのっ! パパだってことにしておけば、マナトはわたしがパパを見てたって言うだろうし、バレないかと…………ごめんなさい」