イケメン、お届けします。【注】返品不可
「はぁ……ほんっと、おまえは……。重ね重ねすみませんでした。隠し子疑惑なんか浮上させちゃって。カノジョさんも、びっくりしたでしょう? 申し訳ない」
「い、いえ……」
「おまえも謝れ! 下手したら別れ話に発展してたかもしれないんだぞ!」
「お、お父さん、ごめんなさい。ぼくがパパって言ったから……」
声を荒らげる父親を見て、マナトくんが泣きそうになる。
「あの、わたしたちなら大丈夫ですから! ね? オオカミさん」
オオカミさんも事を荒立てる気はないらしく、鷹揚に微笑んでみせる。
「実際に何か被害を被ったわけでもないですし、気にしないでください」
「本当にすみませんでした」
イケメン好きの奥さんは困った人だが、旦那さんはしっかりしているようだ。
しっかり頭を下げ、何かあれば連絡をと言い出すのをオオカミさんはやんわりと止め、両親と手を繋いで帰っていくマナトくんを見送った。
一件落着。
彼らの姿が完全に見えなくなってから、オオカミさんは顔に貼り付けていた笑みを消し、深々と溜息を吐いて呟いた。
「映画の続きで、悪夢を見ているのかと思った……」
マナトくんを抱え、慌てふためいて必死に言い訳するオオカミさんの姿を思い返し、笑いがふつふつと込み上げる。
「……ふっ……くっ……くはぅ」
「あかり」
「ご、め、ごめなっさっ……」
「笑いごとじゃない。まったく身に覚えがないのに、突然『パパ』だなんて言われたら、誰だって平静ではいられないだろうっ!?」
「そ、そうだけど……でも、くっ……くくくっ」
「あかりっ!」
どうにも我慢できない。
「お、おお、かみさんのせ、背中をっ……貸してください」
「…………」
こんなところで爆笑していたら、注目の的になる。
窮余の策として、オオカミさんの広い背中に顔を埋めて五分弱。
ようやく笑いの発作が治まった。
「もう大丈夫です。すみませんでした」
「念のため言っておくが、隠し子はいないし、隠し妻もいない」
「はいはい……でも、いいパパぶりでした」
「…………」
苦い表情でわたしを睨むオオカミさんは、「このままだと、ちっともそれらしい雰囲気にならない」と言い、「下見するぞ」とすぐ傍にあるテナントを示した。
店構えからしてうっかりでは足を踏み入れられない、敷居の高さを思わせる一流宝飾店だ。
「え、何の下見ですか?」
「恋人同士なら、指輪を見たりするものだろう?」
「い、いえ……」
「おまえも謝れ! 下手したら別れ話に発展してたかもしれないんだぞ!」
「お、お父さん、ごめんなさい。ぼくがパパって言ったから……」
声を荒らげる父親を見て、マナトくんが泣きそうになる。
「あの、わたしたちなら大丈夫ですから! ね? オオカミさん」
オオカミさんも事を荒立てる気はないらしく、鷹揚に微笑んでみせる。
「実際に何か被害を被ったわけでもないですし、気にしないでください」
「本当にすみませんでした」
イケメン好きの奥さんは困った人だが、旦那さんはしっかりしているようだ。
しっかり頭を下げ、何かあれば連絡をと言い出すのをオオカミさんはやんわりと止め、両親と手を繋いで帰っていくマナトくんを見送った。
一件落着。
彼らの姿が完全に見えなくなってから、オオカミさんは顔に貼り付けていた笑みを消し、深々と溜息を吐いて呟いた。
「映画の続きで、悪夢を見ているのかと思った……」
マナトくんを抱え、慌てふためいて必死に言い訳するオオカミさんの姿を思い返し、笑いがふつふつと込み上げる。
「……ふっ……くっ……くはぅ」
「あかり」
「ご、め、ごめなっさっ……」
「笑いごとじゃない。まったく身に覚えがないのに、突然『パパ』だなんて言われたら、誰だって平静ではいられないだろうっ!?」
「そ、そうだけど……でも、くっ……くくくっ」
「あかりっ!」
どうにも我慢できない。
「お、おお、かみさんのせ、背中をっ……貸してください」
「…………」
こんなところで爆笑していたら、注目の的になる。
窮余の策として、オオカミさんの広い背中に顔を埋めて五分弱。
ようやく笑いの発作が治まった。
「もう大丈夫です。すみませんでした」
「念のため言っておくが、隠し子はいないし、隠し妻もいない」
「はいはい……でも、いいパパぶりでした」
「…………」
苦い表情でわたしを睨むオオカミさんは、「このままだと、ちっともそれらしい雰囲気にならない」と言い、「下見するぞ」とすぐ傍にあるテナントを示した。
店構えからしてうっかりでは足を踏み入れられない、敷居の高さを思わせる一流宝飾店だ。
「え、何の下見ですか?」
「恋人同士なら、指輪を見たりするものだろう?」