イケメン、お届けします。【注】返品不可
いまわたしたちがいる寝室の手前には、もう一部屋あった。
(……スイートルーム?)
「余計なことを考えるな。集中しろ」
スカートの中に潜り込んだ手が、直に太腿を撫で上げる。
「え、や、ちょっと待っ……」
「待たない」
「せ、せめてシャワー……」
「そんなものはあとでいい」
「でもっ」
「何時間、我慢していると思ってる?」
「…………」
「抱きたい」
オオカミさんは、本物の恋人ではないし、友人ですらない。
正体不明のひとだ。
けれど、惹かれている。
その気持ちをごまかしたり、なかったことにしたりするよりも、素直に認めてしまう方が楽だった。
今日一日、夢を見ても。普段のわたしとはちがうことをしても、誕生日なら許される気がした。
牙をむいたドーベルマンの要求を前にして、できる返事は一つ。
そして、わたしもそれを望んでいる。
「……はい」