イケメン、お届けします。【注】返品不可


いまわたしたちがいる寝室の手前には、もう一部屋あった。


(……スイートルーム?)

「余計なことを考えるな。集中しろ」


スカートの中に潜り込んだ手が、直に太腿を撫で上げる。


「え、や、ちょっと待っ……」

「待たない」

「せ、せめてシャワー……」

「そんなものはあとでいい」

「でもっ」

「何時間、我慢していると思ってる?」

「…………」

「抱きたい」


オオカミさんは、本物の恋人ではないし、友人ですらない。
正体不明のひとだ。

けれど、惹かれている。

その気持ちをごまかしたり、なかったことにしたりするよりも、素直に認めてしまう方が楽だった。

今日一日、夢を見ても。普段のわたしとはちがうことをしても、誕生日なら許される気がした。

牙をむいたドーベルマンの要求を前にして、できる返事は一つ。
そして、わたしもそれを望んでいる。


「……はい」

< 41 / 67 >

この作品をシェア

pagetop