イケメン、お届けします。【注】返品不可
承諾するなり、あっという間に裸にされ、恥ずかしさからシーツに潜り込もうとして、笑われた。
「いまさら隠しても意味はないだろう? 朝に全部見た」
「それとこれとはっ」
「焦らすのも、焦らされるのも好きじゃない。行きつく先が同じなら、時間をかける必要はない。だからと言って、手を抜いたりはしないから安心しろ」
キスも愛撫も、はてしなく優しかった。
が、それはあくでも前戯。
見た目どおりの獰猛さで、オオカミさんはわたしをめちゃくちゃに抱いた。
せっかくきれいにセットしてもらった髪はぐちゃぐちゃになり、メイクは泣き叫んだせいでボロボロ。
せっかくマッサージでほぐれた筋肉も想定外の動きに悲鳴を上げた。
途中、さすがにわたしの崩壊っぷりが目に余ったのか、バスルームでイチャつくついでにシャワーを許された。
そのあとも、疲れを知らぬオオカミさんに翻弄され続け、どれくらいの時間が過ぎただろう。
疲れ果て、ベッドの上でぐったりしていると、オオカミさんがふと呟いた。
「そう言えば、バースデーケーキを忘れていた」
「……ケーキ?」
「シャンパンもある」
オオカミさんはバスローブを羽織り、まるで身体に力が入らないわたしをシーツに包んで抱き上げる。
リビングのソファーにわたしを下ろし、冷蔵庫からケーキの箱を取り出し、小気味いい音を立ててシャンパンを開けた。
ケーキは、二人で食べるにはちょうどいい大きさで、真っ赤ないちごがひしめきあっている。
「美味しそう!」
「待て、あかり。食べる前に、やることがあるだろう?」
さっそくフォークを手にしたわたしを止めたオオカミさんは、ケーキにナンバーキャンドルを刺して火を灯し、部屋の明かりを落とした。
「本当は二十八本ロウソクを立てたかったんだ。ケーキのサイズ的に無理だと言われて、数字にしたが……迫力に欠けるな」
「バースデーケーキに迫力必要ないと思います」
「あかりが歌ってほしいなら、歌うが?」
「いいえ」
歌う方も恥ずかしいだろうが、聞く方だって恥ずかしい。
オオカミさんはくすりと笑い、ごく普通のお祝いの言葉をくれた。
「ハッピーバースデー、あかり。願いごとは決まっているか? いくつでも、どんな願いでも叶えてやる」
「願いごとを叶えてくれるのは、神様。オオカミさんじゃないでしょう?」
「神様に頼むより、確実だ」
「それは、オオカミさんが叶えられることなら、でしょう? わたしの願いごとは、オオカミさんには叶えられません」
「そんなことはない」
「あるんです」
「本当に俺には叶えられないことなのか? 言ってみろ」
「神様への願いごとは口にしないものです」
オオカミさんは、大いに不服そうだったが、わたしの願いごとは「今日」が終わらないこと。
神さまだって、叶えられない。
だから、せめて明日の朝目が覚めるまでは、夢の中にいたい。
そう思いながら、ロウソクの炎を吹き消した。