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夢のあとには現実が待っている
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ひとつ歳を取ったからといって、何かが劇的に変わるわけではない。
いつもと変わらぬ月曜日。
何だかんだでバタバタしながら一日の勤務を終えての帰宅途中。
チェックしたスマホに、ルミさんからのメッセージが届いているのを発見した。
『今夜、店に来て! ぜったいに!』
何事かと思いながら、週末にもらった誕生日プレゼントのお礼も言いたいし、と駅へ向かっていた足をお店へ向けた。
「こんばんは、あかりさん。いつもの席、どうぞ~」
「……ありがとう」
出迎えてくれたのは顔なじみのスタッフ。
バーテンダーから、他店のトラブル対応で少し遅れるというルミさんからの伝言をもらう。
いつものようにカウンター席に座り、一杯目を頼もうとしたところへ、背後からおずおずと話しかけられた。
「あのう……あかりさん、ですよね?」
「はい?」
振り返った先にいたのは、カフェオレ色の髪をしたゆるふわ癒し系の若い男の子。
つぶらな瞳が子犬を思わせる。
「あの、ちょっとむこうでお話させてもらってもいいですか?」
「いいけど……?」
周囲の目を憚るように、店の奥にある化粧室への通路を示す。
もじもじソワソワしている彼が、何かよからぬことを企んでいるとは思えず、二つ返事で座ったばかりの椅子から滑り降りた。
告白、の可能性は百パーセントないだろうが、まったく見当がつかない。
内心首を傾げつつ、スタッフや客の目が届かない暗がりまで来たころで、わたしの先を歩いていた子犬の彼はくるりと振り返り、ガバッと身体を二つ折りにして頭を下げた。
「ほんと、すみませんでしたっ!」
「え」
「勝手に代役なんか立てて、申し訳ありませんでした! あの、言い訳にしか聞こえないと思うんですけど、でも、オーナーから頼まれた時、カノジョと付き合い始めた記念日だってことをすっかり忘れてて……。それで、青くなって右往左往していたら、兄貴が『俺が行く』と言い出して。あかりさんのことはよく知っているっていうから、大丈夫だと思ったんです。それが、あとで確認したら、隣で飲んでいるときに、オーナーと話していたのを聞いてただけだって……」
「…………」