イケメン、お届けします。【注】返品不可
怒涛の勢いで詫びや言い訳、事情を説明されて、混乱する。
「えっと……あの、まず先にお名前を伺っても?」
「あ! すみません。大上 陽です。店では『シバ』って呼ばれてます。マメシバに似てるって……」
ルミさんのメールに書かれていた名を思い出し、目の前にいる若者を見つめ、納得した。
「マメシバの……シバちゃん……」
「はい」
「つまり、本当なら……サプライズのプレゼントは、あなただったと?」
「そうです。でも、兄貴は俺より金持ってるし、車もあるし、贅沢なバースデープレゼントとかも朝飯前だし、外国育ちでエスコートも手慣れてるし。そんなにイヤな思いはさせなかったと思うんですけど……ただ、」
上目遣いでこちらを窺うシバちゃんは、一段と声を潜めて訊ねた。
「手が早いんですよね。無事に帰してもらえました?」
まさかここで、一晩中ベッドの上でもつれあっていたなんて報告できまい。
引きつりながらも、シラを切る。
「当たり前じゃない! わたし、男の人にひとめぼれされるような美女じゃないもの」
「そんなことないですよ。あの、本当に何もなかったんですか? 今日電話したら、兄貴の機嫌がやたら良かったんで、もしや……と思ったんですけれど」
そりゃあ、機嫌が悪いと聞かされるよりはいいけれど、それだけで浮かれて舞い上がれるほどおめでたくはない。
肉体的な欲求が満たされて、気分爽快なだけだったのかもしれないのだから。
しかし、だからと言って、そんな疑念をわざわざ口に出す必要はない。
「とにかく、何もな……」
お茶を濁し、言葉を濁し、この話題から遠ざかろうとした時、突然背後からお叱りの声が飛んできた。
「シバ、よりによって、どうしてアイツなんかに代役を頼んだわけっ!?」
恐る恐る振り返れば、仁王立ちのルミさんがいた。
「る、ルミさん……」
「オーナー……」
「あかりちゃんは、あんたの兄貴が手を出していいような子じゃないのよ! アイツ、出禁にしてやるぅ!」
「る、ルミさん、わたし、オオカミさんとは何もな……」
「ないわけないでしょう! アイツは、公私共に肉食獣なんだから! 狙った獲物は必ず仕留めるわ。そうでしょ? シバ」
「は、はい……オーナーのおっしゃるとおりで……よくご存じで」
ルミさんは、ビクビクしながら認めたシバちゃんに、怒りをぶつける。
「存じ上げたくなんかないっ!」