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「シンプルで使い勝手が良くて、どんな部屋にも合いそうね。特に椅子がいいわ。いろんなデザインの中から好きなものを選んで組み合わせても、素材が同じだから、違和感もないし。こんなダイニングテーブルがあったら、料理も一層美味しく感じられそう」

「ありがとうございます」


タブレットに映し出される完成したダイニングテーブルを撮影した画像を見ていたルミさんは、顔を上げ、柔らかな笑みを浮かべた。


「ここから、新しい可能性が開けるといいわね? あかりちゃん」

「はい。ダメモトで異動願を出してみようかと思っているんです。挑戦するのはタダですし。一度でダメなら、二度、三度挑戦してもいいわけですし」


少し前までは、可能性なんてないと思っていた。
でもいまは、ほんの少しでも可能性があるのなら、挑戦したいと思う。

ダイニングテーブルとチェアを作りながら、挑戦できない理由はわたしの中以外、どこにもないのだと実感した。

材料を揃え、切ったり、繋げたり、時には最初からやり直し、考え、手を動かさなければ、頭の中に描いたものは形にならない。

学歴だとか、経験だとか、環境だとか、いろんなことを言い訳にして、何もせずに諦めてきたけれど、行きたい場所に辿り着くためには、ただ突っ立っているだけではダメだ。

踏み出さなくては、一歩だって先へ進めない。

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