イケメン、お届けします。【注】返品不可
お届けものは、返品不可
聞き覚えのある声がした、と思ったら、ぐいっと肩を抱かれて引き寄せられた。
椅子から落っこちそうになった身体を易々と抱え上げたのは……、
「……オオカミ、さん?」
「一か月ちかくも放置するなんて、何考えてるのよ? あかりちゃんがほかの男のものになってたら、どうする気だったの?」
ルミさんの非難に対し、オオカミさんはきっぱりひと言。
「奪い返す」
「あかりちゃんがイヤだと言うかもしれないじゃないの」
「それはない。あかりは俺に惚れているからな」
「お、オオカミさんっ!?」
いきなり何を言い出すのだと慌てふためくわたしに対し、オオカミさんは涼しい顔でさらに赤面ものの台詞を投げつけてくる。
「出会った途端にフォーリンラブで、ウエディングベルを鳴らすんだろう?」
「あ、あれは酔っ払いの戯言でっ」
「人間、酔った時にこそ本性が現れるものだ」
「それとこれとは話がちがいますっ」
「ちがわない。俺は、ロクデナシの男にばかり引っかかっているくせに、それでもまだひとを信じたいと言うあかりにひとめ惚れしたんだ」
予想もしていなかった告白に、心臓が止まりかけた。
「う、そ……だって、あのとき……女の人と一緒、だった……」
「酔っ払ったあかりの暴露話を聞くのが面白くて、相手をするのが面倒になったんで、途中で帰した」
「……盗み聞きするなんて、酷い」
「盗み聞きじゃない。隣に座っていたら、たまたま聞こえて来たんだ」
「笑ってた……」
「ハバネロカレーと靴下の話では、確かに吹き出しそうになった。が、それ以外のロクデナシどもの話を聞いて、こんなにイイ女を手放すなんて、馬鹿な男たちだと思った」
(な、んなの……わたしの息の根を止める気なのっ!?)
立て続けの攻撃に、このままではわたしの心臓が持ち堪えられそうにない。
一旦冷静になろうと、冗談めかして問い返す。
「これ、何のサービスですか?」
「サービスじゃない。プロポーズだ」
(どこがっ!?)