イケメン、お届けします。【注】返品不可
オオカミさんは、わたしを抱えるようにして店から連れ出すと、待たせていた車に乗り込んだ。
「オオカミさん……いいんですか? 逃げ出して。ルミさんとか、シバちゃんに、あとで怒られるんじゃありません?」
「あいつらは、単に面白がっているだけだ。公開プロポーズなんて恥ずかしい真似、何度もできるかっ!」
「協力してくれたんですよね?」
「あいつらには、山ほど貸しがある。協力して当然だ」
憤然として言い放つオオカミさんは、かなりご立腹のようだ。
「でも、記念に撮影してもらってもよかったかも?」
「……あかり?」
じいっと見つめられ、圧に負け、前言を撤回する。
「冗談です! で、あの、どこへ?」
車は、わたしのアパートとはちがう方向へ、進路を取っているようだ。
「新居だ」
「新居?」
「あかりと暮らすために家を用意したと言っただろう?」
「え、あれ、本当だったんですか?」
「当たり前だ。そんなことで嘘を吐いてどうする?」
「そう、ですけど……でも、なんか、オオカミさんがここにいること自体、イマイチ信じられないというか……」
夢ではないとわかっていても、突然の展開に頭が追い付かない。
足が地についていないような、ふわふわした心地だ。
そう訴えたわたしに、オオカミさんは何の前触れもなく、いきなりキスをした。
久しぶりのキスは、記憶にあるよりも優しく、温かく、気持ちいい。
「これでもまだ、信じられないか?」
「……いえ」
いつまでもキスしていたいくらいだったが、車が目的地に着いたため、切り上げなくてはならなかった。