愛しの三味線侍
《タイキ:よっ! 失恋の傷は癒えたか?》


そんなに急に癒えるわけがないでしょ。


そう思ったけれど、タイキくんの呑気さにふふっと笑ってしまう。


昨日の朝までに比べれば、随分と癒やされたのかも知れない。


それをタイキくんに伝えると、すぐに返事が来た。


《タイキ:そっか! 実は一弘のやつ、ここ10年くらい彼女がいないんだ。あいつ、音楽バカだから》


音楽バカという文面で、昨日一弘が指先を動かしているのを思い出した。


やっぱりギターでもやっているのかもしれない。


昨日はその関係の帰りで、あんな奇抜な格好をしていたのかも。


そう思うとなんとなく納得できてきた。


《舞:そうなんだ》


《タイキ:なんだよ、気のない返事だなぁ》


そう言われても、他にどう返事をしろと言うのだろう。


昨日会ったばかりの人について、そこまで深く関心を持つのは難しいことだった。


《タイキ:俺は舞と一弘はお似合いだと思うけど?》


そのメッセージを見てようやく昨日のタイキくんの思惑に気が付いた。


タイキくんもアユミも、私と一弘を出会わせるために飲み会を開いたようだ。


それならそうと言ってくれればよかったのに。


と、思ったがすぐに考え直す。
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