愛しの三味線侍
そしてその女に毎日のように注意することで、満足していたのだ。


その途端に気持がスッと覚めてしまった。


それが、一週間前の出来事だ。


別れ方としては最低なものだったと思う。


だからか、別れてスッキリしたはずなのにいつまでも私の心には健という澱が残ってしまったようだ。


いつの間にか意識は雑誌から健との最低な別れに移り変わっていて、ハッと我に返った。


ダメだダメだ。


貴重な休みをこんなことのために使うわけには行かない。


「テレビでも見よう」


わざと明るく声を出してリモコンを手に取る。


しかし、テレビはどこも通販チョッピングばかりをしている時間帯らしくて見るものがない。


こんなときに健に映画を借りることができたら。


ふとそんな風に考えて強く左右に首を振った。


どんなことをしていても、どうしても気持ちが健に持っていかれてしまう。


こんなことじゃダメだ。


私は着替えをして出かけることにした。


鏡で確認してみると少しはむくみも取れている。


これなら出かけられそうだ。
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