愛しの三味線侍
近くの喫茶店でコーヒーでも飲んで帰ろう。


そう思ってアパートを出たタイミングで、スマアホが震えた。


今度はなんだろう?


ドアの鍵をかけながらスマホ画面を確認する。


そこには一弘からのメッセージが表示されていて、一瞬心臓がドクンッとはねた。


どうせ昨日のお礼とか、飲みすぎて大丈夫? とか、そういう連絡だろう。


そう思っていたのだが、そこには以外なことが書かれていた。


《一弘:今からレコーディングなんだけど、よかったら見学に来ない?》


突然の誘いに戸惑う。


いや、それよりもレコーディングってなに?


さっきタイキくんから音楽をしていると聞いたばかりだから、それのレコーディングだろうか?


メッセージに返事をすることもできずにその場に立ち尽くしてしまう。


レコーディングなんて珍しいものが見学できるのは嬉しい。


でも、本当に私が行ってもいいんだろうか?


一弘とは昨日出会ったばかりで、ほとんどなにも知らない関係だ。


どうすればいいのか考えあぐねている間に《一弘:迎えに行くから昨日の駅まで来て》と、メッセージが届いてしまった。


これは否が応でも連れて行かれてしまうやつだ。


嫌なら今断るしかない。
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