愛しの三味線侍
舞はどうしてこうもズボラなんだ? 毎日仕事をしていることは言い訳にはならないからな? 僕だって毎日仕事をしているけれど、ここまで部屋が汚くなったりはしないよ』


その後健の部屋へ行ってみると、たしかに部屋の中はキレイに整理整頓されていた。


無駄なものは少なく、でも趣味の映画鑑賞ができるように整えられている部屋。


『舞はもう少しいらなくなったものを捨てたりしたらいいんじゃないかな?』


それは掃除ができる健にとってなんでも無い助言だったに違いない。


けれど、この時初めて健の部屋に入った私は愕然としてしまった。


自分の部屋とは全然違うことももちろんだし、健がここまでキレイ好きだとも知らなかったからだ。


同時に『じゃあ、どうして今まで汚い私の部屋に来てたんだ』と、思ってしまった。


付き合って半年立つけれど、私が健の家に来たのはこれが初めてだったからだ。


毎回毎回私の汚い部屋に来て、健はどう感じていたんだろう。


熱い湯船に肩まで使って、大きく息を吐き出した。


なんとも言えない記憶が蘇ってきてしまったけれど、今日は夜に大事が予定が入っている。


気持ちを切り替えないといけない。
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