愛しの三味線侍
☆☆☆

それからレコーディングは順調に進んでいる様子だった。


沢山の関係者に囲まれて最初は緊張していたけれど、それもだんだん慣れてきた頃、一弘の番になった。


ドキドキしながらガラス張りの部屋へ視線を向ける。


和服姿の一弘が楽器をもってスタンバイする。


収録がスタートして楽器がジャンッ! と鳴った瞬間、私は目を見開いていた。


それは思っていたギターの音色ではなかった。


ギターよりも高く、耳障りのいい音。


キラキラと星がまたたいているようにも感じられる音。


そして少しだけ間延びしたような美しい音色。


「三味線……?」


そこでようやく気が付いた。


一弘が持っているのはギターではなく、三味線だったのだ。


クリーム色の三本弦の三味線が激しくかき鳴らされている。


唖然としてその様子を見つめた。


三味線の音色は時に穏やかに、そして時に激しくメロディを紡ぐ。


徐々に曲はピークに達していき、一弘の額から汗が流れた。


それでも手のスピードを緩めることなく一気に絶頂まで駆け巡る。


すごい……。
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