愛しの三味線侍
私は顔の前でブンブンと大きく手を振った。


一弘が言うように今日で完全にファンになったけれど、それはありがたいことだった。


自分の住む世界が広がったように感じられる。


「今日レコーディングした曲は、いつ発売なんですか?」


聞くと、三ヶ月ほど後だと言う。


明日もまだレコーディングが続き、それが終わったらカップリング曲のレコーディング。


それからCDの顔となるジャケット撮影などがあり、ようやく世の中に出ることになるらしい。


CDの1枚を作成するためにも何ヶ月、長いときには何年もの時間をかけて作り上げている。


そうわかると、またため息が出た。


そんなに長い間モチベーションを保ち続けることができるなんて、私には考えられないことだった。


たった1日の仕事だって、途中で頭を休ませなければやっていられない。


「でも、舞ちゃんにはプレゼントするよ」


「あ、ありがとうございます!」


また深くお辞儀をした。
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