愛しの三味線侍
プレゼントして貰っても、きっと自分でも1枚買いに行くだろう。


それくらい今日は楽しかった。


「その敬語やめてくれないかな?」


一弘が居心地悪そうに頭をかいて呟く。


「あ、ご、ごめん。あまりにもすごかったから」


つい敬語になってしまっていた。


昨日あれだけ飲んで、敬語もなにもなかったというのに。


「そんなに興奮してくれて、俺も嬉しいよ」


「レコーディングなんて初めて見たし、それに三味線だとは思ってなくて、本当に驚いたの」


「珍しいバンドだねってよく言われる」


「だよね! それになんだか侍みたいに見えてすごいカッコイイなぁって思って」


「侍?」


私の言葉に一弘は瞬きをした。


私はスタジオで一弘を見ているときに感じたことをそのまま伝えた。


力強く音楽を奏でる姿が、まるで刀を振るう侍に見えたと。


「私、幼い頃祖父と一緒に時代劇を見てたの。そのお侍さんを思い出しちゃった」


えへへと笑って見せると、不意に一弘は真剣な表情になった。


何かを考え込むように顎に手を当てている。


「あの、どうかした?」
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