愛しの三味線侍
☆☆☆

それからライブ当日まではあっという間に過ぎて行った。


一弘からのメッセージは相変わらずほとんど来なかったけれど、それでもスタンプくらいは返してくれるようになった。


アユミたちから釘を刺されてしまったのかもしれない。


狭いライブ会場は満員御礼だった。


若い男性ファンが多いそうで、なんとなく安心した。


一弘はファンを増やしたいと言ったいたけれど、年齢や性別を越えて、という意味だったのだろう。


ライブ前の会場内はすでに熱気に包まれ始めていて、ワンドリンク制のジュースをすぐに飲み干してしまった。


そしてついにライブが始まった。


派手な和服姿の男性5人がステージ上に登場すると、大きな歓声が湧き上がる。


私はボーカルの右手に立っている一弘の姿に釘付けになった。


カラフルなパッチワークでできた着物。


その着物の腰には模造刀が差さされている。


よく見ると、他のメンバーたちも同じように模造刀を常備しているようだ。


「次は新曲です。この曲は間奏を長くとってその間にパフォーマンスができるように作りました」


数曲終えた後、ボーカルが荒い息を吐きながら説明している。
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