愛しの三味線侍
その声が以外とキレイで思わずドキッとしてしまう。


服装は奇抜だし、耳には沢山のピアスを付けている。


髪の毛はツンツンに立たせていかにもヤンチャそうだ。


「そ、そうなんだ」


ぎこちなく答えると一弘は片手を上げて店員を呼んだ。


声もそうだけれど、ひとつひとつの所作がキレイな気がして驚いた。


見た目だけじゃわからないけれど、いい家の育ちなのかもしれない。


「舞……さんは、どんな仕事をしてるんですか?」


少しずつお酒が進んできたとき、一弘がそう質問をしてきた。


女性を呼ぶときのぎこちさなが可愛らしい。


さっきから見ていると、食事をするときの箸使いもとてもキレイだった。


一弘のような男性のことをギャップ萌えというのかも知れない。


「会社で事務をしています」


面白みのない返事しかできなくて申し訳ない。


「いいですね。いい仕事だと思います」


「そ、そうですか」


事務仕事のどこにいい仕事だと感じたのかわからないけれど、頷いておく。


中には事務仕事と聞いた瞬間笑ってくる男性もいるので、一弘の反応は予想外だった。


それよりも気になるのは一弘の仕事の方だ。


服のセンスが奇抜だから、やっぱりアパレル関係だろうか?
< 8 / 40 >

この作品をシェア

pagetop