旦那様は征服者~孔明編~
「孔明様」
「ん?」

「孔明様の服が見たいんですが……」
「俺?」
「はい。私に選ばせてもらえませんか?」

「………」
自分の服を見に行くということは、男が多いブースに行くということ。

牡丹の気持ちはできる限り汲み取りたい。

「やっぱ、ダメですか?」

「…………わかった。ただ、時間をかけるなよ」

「はい!!」
満面の笑みになる、牡丹。
孔明も自然と微笑んだ。


メンズのブースに向かい、パッと見て気になる服を取り孔明にあてる。
だいたい孔明にどんなモノを着てほしいか、似合うかは頭の中で出来上がってる。
牡丹は、作業をできる限りスムーズに時間をかけないように済ませようとしていた。

正直気分は良いものではないが、牡丹が自分の為に、自分のことだけを考えてくれていることには満足感を覚えていた。

この時までは━━━━━━━


「孔明様」
「ん?」

「これ…どっちが良いかな?」

「俺に聞くな。
俺は、全くファッションに興味がない」
「えーーー!!」
「お前の服を決めるんならちゃんと考えるが、自分の服を決めるのに俺の頭を使わせるな!
俺の頭の中は、お前のことしかないからな。
余計なモンを入れるな!」

「ブー!!」
頬を膨らませる牡丹。

「そんな可愛い顔をしても無駄だ!
決めきれないなら、二つとも買え!
遥大!この二つだ!」
「は~い!」

「え!?ちょっと待ってください!
じゃあ、私がちゃんと決めます!」

「だったら、早くしろ!
なんか、吐きそうだ!」

「は、はい!!」
慌てて牡丹が、どっちにするか決めようとしていると……


「そちらの方が、彼氏さんにお似合いですよ!」


男性店員が、声をかけてきた。


「「え……!!!?」」
牡丹と伊丹が、フリーズする。

孔明の機嫌が限界を超えようとしている、今。
こんな時に話しかけられたら、孔明がキレる可能性がある。

しかも、男性。

「ここは大丈夫だから、向こうに行ってろよ!!」
慌てて伊丹が、店員を下がらせる。

「孔明様!!こっち!こっちにします!」
牡丹も慌てて、孔明に見せた。

「………ん。遥大、こっちだ。早く買って帰るぞ」
服を伊丹に乱暴に渡し、牡丹の手を引いたのだった。
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