クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
一度家に戻って夕飯作りをする。
19時に待ち合わせの喫茶まで15分あれば行ける。
その前に夕食の準備だけ済ませておきたいと思いキッチンに立つ。
今日はオムライスとコンソメスープとポテトサラダにしよう。
オムライスは炊き込みご飯のように炊飯器で作る為時短が出来る。
母は働いていた為、いつも短時間で出来るご飯を作ってくれた。
修哉さんは壁に寄りかかり、
コーヒーを飲みながらこちらを観察している。
わ
「お仕事大丈夫でしたか?
私の事は気にせず、お仕事してでくださいね。」
修哉さんに声をかける。
「小春を見てたいんだ。」
ふふっと笑い言う。
「ずっと見られてると、やり辛いです。ソファでくつろいでて下さい。」
小春が訴えると、分かったと言って笑いながら離れて行った。
しばらく料理に没頭していると、不意にピアノの音が聞こえる。
修哉さんが弾いてるんだ。気になりながら仕事中だといけないと思い、遠目から見守る。
新しい曲かな?聞いた事の無い旋律だ。
夕飯の支度をある程度終えて、そっと修哉さんに近づく。
修哉さんが気づいて振り返る。
ここに座ってと言う風に、椅子を叩いて小春を呼ぶ。
長椅子の横に座ろうと遠慮がちに近づくと、
不意に腕を引っ張られて、気付くと修哉さんの足の間で、後ろから抱きしめられる感じで座らされていた。
びっくりして、小春の心拍は上がる。
居た堪れなくなって、逃げようとして腰を浮かすと、お腹に片手を回され再び座らせる。
修哉さんがピアノを弾きながら静かに歌い出す。
耳元で囁くように歌う。
小春は身動き一つ取れず、器用に鍵盤の上を動く修哉の綺麗な長い指をひたすら見つめていた。
初めて聞く恋唄はなんだかくすぐったくて、切なくて、特等席に感動して顔を見るのも恥ずかしい。
修哉さんは弾き終えて、優しく後ろから抱きしめられる。
「小春を思いながらいつも作ってるんだ。
再会してからは止めどなくメロディが湧き上がって、曲がどんどん溢れてくる。
小春が側に居てくれるおかげだ。
ありがとう。」
首をぶんぶん横に振りながら、感動で泣きそうになるのを堪えるのが精一杯だった。
「私こそ、ありがとうです。
何にも持ってなくて、自信も無いこんな私を忘れないで、探し出してくれてありがとうございます。」
あなたに相応しい人になりたい。今は強くそう思う。
だから、負けたくない。
怖くても踏み出して乗り越えなくちゃ
新しい未来は来ないから。
涙が出そうになって、
上を向いてなんとか止める。
修哉さんと目が合って、なんとか押し留めていた涙を指で優しく拭き取られる。
「そんな風に思うな。
小春は俺にとってかけがえのない存在なんだ。俺に愛されてるっていう自信を持っていて欲しい。」
頬に優しくキスをする。
「さぁ。そろそろ行く支度をするか。
ちゃっちゃと片付けて帰ってこよう。早くオムライス食べたい。」
軽く言って、
ピアノを閉じそっと席を離れて小春を自由にしてくれる。
「はい。」
着替えをする為に部屋に行く。