クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
リビングに行き、泉に電話してみる。
「もしもし。」
「おー、お疲れー。
あの後、小春ちゃん、大丈夫だったか?」
第一声が小春の心配とは、アイツも相当小春を気に入ったなと呆れながら答える。
「さっきまで大泣きしてたけど、疲れて寝たみたいだ。」
「大泣き⁉︎何で?
安堵して緊張の糸が切れたのか?」
「いや、それとは別の件だ。」
「はぁ。お前が泣かせたのか?
小春ちゃんにとっては今日は緊張の連続だったんだぞ、そこんとこちゃんと考えてやれよ。」
「何でお前から言われなきゃならないんだ。」
若干イラっとして応える。
「…お前の過保護がうったんだよ。」
小春の心配は俺の役目だと心の中で思うが堪える。
「で、どうだったんだ?」
「ああ。慰謝料300万は取れそうだ。」
「金の問題じゃない。
ちゃんと自分のしでかした事を理解したのかって事だよ。」
「とんだ勘違い野郎だったな。今回は、この俺を持ってでも諭すのに苦労したよ。」
「もう二度と近づかないって念書にサインもさせたし、これを破ったら500万請求するって脅しといた。」
「結局、弁護士は金が目当てなのか?
まぁ。本人が理解して反省してるならそれでいい。」
「修哉にしてはやけに寛大だな。」
泉が笑って言う。
「お前も、小春も、俺の事をどっかのチンピラみたいな目でみるな。
…アイツの気持ちも分からなくもないからな。」
「まぁ。小春ちゃんの気持ちがお前になかったら、同じ穴のムジナだからな。」
図星をつかれて修哉は押し黙る。
「大事にしろよ。
あんな良い子はなかなかいない。
…正直羨ましいよ。」
「分かってる。
お前も遊んでばっかりいないでそろそろ落ち着けよな。」
「お前から言われるようになるとはなぁ。」
泉が苦笑いする。
「今回の報酬は小春ちゃんの手料理でいいから。ちゃんともてなしてくれよ。」
また、悪い虫が付いたなと修哉はため息を吐く。
「はぁ?払うよ。ちゃんと請求してくれ。
お前に貸しは作りたくない。」
「俺的には昔の貸しを返したつもりだ。」
「どう言うことだ?」
「忘れてるのか?
お前が俺に弁護士が合ってるって言ったんだ。『いつか弁護士になったら俺の為に働いてくれ』って約束した。だから、目指す事にしたんだ。
お前のおかげで、俺が進路で悩んでた時にズバッと言われて腹が決まったんだよ。」
「ああそう言うことか。
お前の論破する力は負けなしだからな。
弁護士が天職だろ?」
「お前だけには敵わないけどな。」
「お前と口論になったら負けるよきっと。」
修哉は笑って答える。
「お前は負けないよ。
いっつも俺は結局、お前の背中を追ってるんだ。選択に迷った時、修哉だったらどうする?って考えるんだ。そうすると自ずと答えが出る。」
「なんだ?どうした?何が目的だ?」
修哉は照れ笑いをして「小春が落ち着いたら遊びに来い」と伝えて電話を終える。
泉は高校の時からやたら突っかかってくる面倒臭い奴だった。
部活でも夢中になれたのはアイツのおかげかもしれないな。
小春の居るベッドに戻り、しばらく寝顔を堪能する。
この立ち位置は誰にも譲るつもりはない。
もちろん泉にも。
ライバルが多いなぁと思いながら眠りに着く。