クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
ソファに通されてお互いの義父もまじえて自己紹介を改めてする。
義父は今年38歳くらいだったかな?母が43歳で歳下の旦那様だ。
再婚した時には私が20歳だったので新婚さんの邪魔でしか無い私はあまりに家に居づらくて、家を出る決心をした。
これはこれで仲良くやっている。
修哉さんは珍しくずっと笑顔を保ち愛想笑い?なのかな?
無理してる気がしてちょっと心配だけど、家族には好印象だし良かったねと目線を合わせ笑いかける。
母が話しかける。
「母子家庭だから、小春には小さい頃から苦労かけてきたし、我慢もいっぱいさせただろうから、小春には幸せでいてもらいたいの。
1人で慣れない場所で無理をしてるんじゃ無いか心配だったけど、良かったわ。
貴方が側に居てくれるなら安心です。」
「良かったです、信頼して頂けたみたいで。自分も彼女に逢えて救われたので、それ以上に返せていけたら本望です。」
修哉さんも母も安堵の顔をみせる。
義父の隆さんも話し始める。
「僕は小春ちゃんには申し訳ないと思っていて、それまで2人で仲良く生活してたとこに無理矢理割り込んでしまったみたいで、居心地の悪い思いをさせてしまっただろう?
小春ちゃんが幸せになってくれて僕も嬉しい。」
私こそお母さんを幸せにしてくれてありがとうと言いたい。
「隆さんが居てくれたから母は元気でいられるんです。感謝しかありません。」
始めてお互いのわだかまりを取って話せた気がする。
「ところで、結城さんはお仕事は何を?」
母がふと聞き始めて、私は1人あたふたして修哉さんを見る。
修哉さんは私に笑い返して大丈夫だと安心させる。
「実は音楽関係の仕事をしていまして、名刺代わりに今日はこちらを持ってきたので、良かったら後で聞いて下さい。」
そう言って、何枚かCDを差し出す。
いいの⁉︎一般人に教えちゃって、私1人がワタワタする。
「自分が手がけたCDです。」
手渡されて母は目を丸くする。思わず義父にCDを渡して2人で瞬きしている。
「えっ⁉︎
貴方があのYUKIなの⁉︎
えっ⁉︎
こんなとこに居て大丈夫なの?」
母はもはやパニックだ。
「今日から1週間程休暇なのでお気になさらず。」
修哉さんはにこやかに笑って言う。
「あらびっくり!立派な有名人じゃない!
うちの小春なんかで良かったんですか⁉︎」
「小春さんがいいんです。」
力強く返事をしてくれる。
「自分には小春さんが勿体無いぐらいだと思っています。」
それからお昼はお母さんの作った手毬寿司をご馳走になって終始楽しく過ごした。
私がご飯の手伝いをしてる間に、
隆さんが持っていたギターを修哉さんがチューニングしたりして、気付いたらヒロくんも含めて3人仲良くなっていた。
あっそうだ。
は隆さんも若かりし頃ロックを嗜んでたって言っていた。ロック好きに好かれる傾向があるから良かったね、と思いながら3人の様子を眺めていた。
「結城くんすごいね!
ヒロが歌うつたない歌でも即興で伴奏つけたり出来るなんて、本物は違うなぁ。」
隆さんがひとしきり感心して私に話しかける。
「私、修哉さんがギター弾くのは初めてみました。普段はピアノを弾いているので。」
「へぇ。ピアノ弾けるんだ!凄いなぁ。今度聞かせて欲しいなぁ。」
「修哉さんって、絶対音感の持ち主なので、こんな歌って軽く歌うとすぐ弾けちゃったり出来るんですよ。」
嬉しくなってつい褒め称えてしまう。
「YUKIってライブしないだろ?
顔出ししてないからTVも出ないし、勿体無いなぁ。
生で聴きたい人いっぱいいると思うのに。」
隆さんがそう言いながらコーヒーのお代わり持って修哉さんとヒロくんの所に戻っていった。
確かに勿体無いかもしれない。剣持さんももっと世間に出るべきだって言ってたし、この先、顔を出して歌う日も来るんだろうか。