クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
病院に駆けつけ救急外来に飛び込む。
「先程、連絡した、結城と申します。櫻井小春はどこですか?」

早く小春に会いたい。怪我がどんな具合で無事なのか?気が早る。

「婚約者の方ですね。
先程意識が戻りましたので、お話する事ができました。ご案内します。」
受付に居た看護師が小春のいるベッドに案内してくれる。

「櫻井さん。
彼氏さん来られましたよ。
具合はどうですか?」
何台か並ぶ処置室の隅のベッドのカーテンを少し開けながら看護師が話しかける。

「…はい。頭痛が少ししますが大丈夫です。」
か細い声で小春が答える。

「小春?大丈夫か⁉︎」
顔色を伺う。額にはガーゼが当てられ、腕には点滴が痛々しい。

血の気がなく、顔色が悪い。

思わず頬に手を当てる。

「修哉さん…心配かけてごめんなさい。
お仕事、大丈夫ですか?」
こんな時まで俺の心配をする。

「俺の事は大丈夫だ。
気にしなくていいから。

頭痛いのか?他は大丈夫なのか?」
不安が拭いきれず問う。

「大丈夫です。ちょっと頭が痛いくらいで他は何ともありません。」
安心させようと、頬に触れていた俺の手に触れ、小春は優しく笑いかける。

「冷たいな。貧血か?顔色が悪い。」

「貧血でめまいを起こして倒れたようです。
その時に他の乗客に押されて、頭を打って意識を失ったみたいですね。」
シャーっとカーテンが半分空いて、中年の男性医師が顔を出す。

「内科の佐野と申します。」
修哉に軽く会釈をする。

「ありがとうございます。MRIの結果はどうでしたか?」
修哉はすかさず問いただす。

「見た感じ、脳挫傷も見受けられず内出血も無さそうなので大丈夫だと思います。

ただ、専門の脳外科医の判断ですが、脳震盪を起こされてますので安静が必要です。
今晩は1日入院していただき様子を見るべきかと思われます。」

「分かりました。よろしくお願いします。」

「では手続きをお願いしますので、少々お待ち下さい。」
看護師と医師が頭を下げて去っていく。
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