クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

泡を立てて丁寧に洗う。

「俺、他人に触られるの好きじゃ無いからシャンプーとかもやってもらった事ないんだ。

人前で無防備になるのってなんか怖いだろ。」
そんな強迫観念を持っていたなんて初めて知った。

「えっ!いつもどうしてたんですか⁉︎」

「適当にドライヤーで飛ばしてもらってた。」
そう言って笑う。
「そう言う注文したお客様今まで聞いた事ないです。」

「でも、小春に洗ってもらうの気持ちいな。毎日でもやって欲しい。」

「普通のお客様はリラックスして美容院に来るので、シャンプーしてると寝ちゃう人もいるんですよ。」

不意に修哉さんが顔にかけたガーゼを取る。
「この距離感ヤバイな。邪な気持ちになる。」

そう言って小春のうなじに手を回して顔を近づけてくる。
思いもよらない展開で動揺してしまう。

「ちょ、ちょっと修哉さん、
頭まだシャンプーだらけなんです。濡れちゃいますから。」

修哉さんはパッと手を離す。
「危ない。セクハラ野郎と一緒になるとこだった。」

「修哉さんはあの人とは全然違いますから。
私の大好きな先輩ですから、何されても怖くありません。」
一緒にしないでとちょっと怒り口調になる。

そして自分からチュッと軽くキスをした。

「嫌な記憶を上書きさせてもらいました。」
ハニカミながら笑う。

「それじゃ全然足りないんだけど。」
笑いながら修哉さんが甘くて深いキスをしてきた。
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