クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
このところずっと修哉の機嫌が悪い。

元々、会った時からこんな感じだったけど、
少しは隙を見せてくれたっていいのにと、
剣持は思う。

楽しく気楽に生きるがモットーの剣持とは正反対の修哉。

見た目は黒縁メガネでスーツという格好の為、固くて近寄り難いイメージだが、実は剣持という男、高校の時はロックボーカリストを自称、バリバリのロッカーだった。

東京に出て俺は有名になるんだと意気込んでいたのが5年前。
夢破れ。
こんなじゃ無理だとアッサリ辞めて、 
マネージャーになって3年。

才能溢れるカリスマの固まり、修哉に会って1年。
コイツは売れる、絶対行けると思い、
必死に着いてきて正解だったと豪語する。

そんな熱い思いを知ってか知らずか、修哉にはクールにあしらわれる毎日。

でもこのアウトロー的な存在感が、元ロッカー魂をくすぶる。

剣持にとって今の1番の関心ごとは修哉がもっと売れる事だ。
一緒にトップ目指しましょう。アニキっ!!
て、言いたくなるぐらい。 

あれ。
コイツ俺より3歳年下じゃなかったか?
なんなんだこの落ち着き様は

俺なんかレコーディングスタジオ入るだけで未だにバックバクなのに。

いまだかつてないくらい、ワクワクしている。
仕事の手前チクチク言うが、修哉の作り出す曲はかなりアツイ。 

行き帰りの車の中で大熱唱するくらい大好きだ。
それを冷めた目で、当の本人はうざい静かにしろと言う。
そんなところもまたカッコイイと心で叫ぶ。
 
はぁー。また気持ちが空回りする。

そんなクールな修哉が、今週に入って妙にソワソワしている。

いや、彼女に会ってからだ。
お弁当屋さんのエプロンをした、色白で目がくりくりの可愛い感じの彼女。

アウトロー的な修哉がこういう感じが好みなのか?って思うぐらい意外な相手だが、
 
過去に何かあったに違いない。

でも、これ以上踏み込んだら嫌われる。
これ以上嫌われたら、
マネージャーをクビになる…
気をつけないと…。
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