クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

心臓がまた、ドキンっと跳ねる。

「えっと。今週中がいいですか?
私、平日は結構忙しくて、今は仕事終わりなんですけど、この後17時からまた仕事なんです。」

「はっ?
どういう事⁉︎
違うバイトもしてるのか⁉︎」

あっ。ヤバイ。
つい本当のことを言っちゃったけど心配されちゃう。
そうだった…。
見た目はクールなイケメンなのに、結構、心配症で、お父さんみたいなとこあったんだった。

「あっ。でも、そんなに忙しいバイトじゃなくて、全然平気なんです。
大丈夫なんで気にしないで下さい。」
早口気味に急いで取り繕う。

「17時〜何時まで?
どこで?何してるの?
場合によっては迎えに行く。」
ぶっきらぼうに容赦なく言い放つ。

あっ、、出た。お父さん…。

「えっと…。先輩に心配してもらわなくても大丈夫なので…気にしないで下い。」

「小春。質問に答えて。
答えるまで電話切らないよ。」

あっ、、どうしよう。ちょっとお怒りモードだ。
観念して告げる。
「コンビニで17時〜22時…です。」
自然と声が小さくなる。

「…なんで、そんなに働いてるの?
そんなに働いて体壊したらどうするんだよ。」
静かな低音で呟く様に、修哉は心配する。

泣きたくなる。
先輩に心配かけたく無いし、私の事なんか気にしないで欲しい。

「修哉?どこいったかと思ったら。そろそろ打ち合わせ入りますよ」
不意に知らない男の人の声が聞こえてきた。

「あっ。ごめんなさい。
あの、お仕事中ですね。またかけ直します。お仕事に戻ってください。」
慌てて電話を切ろうとする。

「待って。コンビニどこ?今夜行くから、教えて。教えてくれないと電話切らせないよ。」

「えっーと。〇〇駅前のコンビニです…。」
観念して小さく吐くように告げた。

「…ごめん。これじゃあ、脅しみたいだよな。
小春を怖がらせたいんじゃ無いんだ。 
ただ、心配なだけで…」

これではこの前と同じと修哉は思い、頭お抱えながらすぐさま謝る。

「いえ。先輩が、私を心配してくれてるのは充分、分かってますので…気にしないで下さい。
あの…お仕事戻って下さい。 
電話切りますね。
では、頑張って下さい。失礼します。」

「小春、ありがとう。電話、嬉しかった。」
修哉は気持ちを伝える。 

小春からの電話をどれだけ待ち望んでいたか、少しでも伝わるように。 

「今夜、本当に行くから。
小春に会いたいんだ。会いたくて仕方ない。
俺を待たせてるなんて気にしなくていいからな。
じゃあ。また。」

「はい。また。」
もっと自分の気持ちを伝えたかったが、これ以上引き伸ばしてはいけないと思い。静かに電話を切った。

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