クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
エレベーターが到着し、スタジオに向かって歩き出す。
「お弁当屋さん来ましたよー!
お昼にしましょうか?」
呼び掛けながら、剣持は重い扉を開き小春を中に招き入れる。
「ご注文ありがとうございます。まごころ弁当です。」
小春も頭を下げて遠慮がちに入る。
顔を上げると、思ったより近くに修哉と髭のディレクターがいて、反射的に一歩後退する。
すると、後ろにいた剣持が小春の両肩に手を置いて、
「ディレクター、お代、先にお願いしますね。」
びっくりして剣持に振替る。
瞬時に修哉が剣持をギロっと睨む。
剣持はビックっとして慌てて彼女から手を離し苦笑いする。やっぱ、修哉の思い人か?っと思う。
「じゃあ。ちょっと休憩にしましょう。」
修哉は何事もなかったかのように冷静に取り繕い、軽く微笑む。
一瞬にソファにいた何人かも席を離れ、髭のディレクターも背伸びをしながらこちらに近づいてきた。
「ありがとうねー。お弁当、えーっと君は櫻井さんだっけ?下の名前は?」
何で名前?首をかしかげながら答える。
「こ、小春と申します。」
「小春ちゃんかぁ。可愛い名前だね。
小春ちゃんさぁ、ちょっと女優とかに興味ない?」
ニコニコしながらディレクターは聞いてくる。
「えぇっ⁉︎」と、目を大きくして瞬く。