クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
すかさず剣持が2人の間に入って、
「ちょっと、ディレクター!
それ、新手のナンパかなんかですか?
シロートさんをびっくりさせちゃダメですって。」
「違うよ。ちょうど今度、
若手グループのPV取りがあるからさぁ。
そこに出てもらえる子探してるんだよね。
小春ちゃんなんかぴったりなんだよねー。
清楚でピュアな感じがぴったり。
学生役でセーラー服とか来たら似合うと思うんだよねー。」
セ、セーラー服⁉︎
今年で私、24歳なんだけど…
「あの、私とっくに成人してるんですけど…」
困惑気味に答える。
「いやいや。まだいけるって、小春ちゃん可愛いし似合うと思うんだよね。どう?」
大丈夫⁉︎衝撃で固まる。
2人の会話の行方を見守っていた剣持が、
「ディレクター。それ、セクハラですよ。
ダメです。下手したら訴えられちゃうんで」
近くのソファで座ってPCに向かって、
密かに会話を聞いていた修哉は、
眉間に皺を寄せ腕を組みながら不愉快そうにディレクターを睨んだ。
それを察した、
いや怯えた剣持は慌てた。
「ほら、櫻井さんは、お店戻らないと行けないでしょ。
冗談いってないで早くお支払いしますよ。」
あなた、やばい人敵にまわしてますよ。心の中で剣持はつけたした。
「あっ。…お代は全部で5800円です。」
お会計を頂き、ありがとうございましたと小春は頭を下げて、
「小春ちゃんまた来てねー。」
と手を振るディレクターに再度頭を下げ、
急いで部屋の重たいドアを両手で押して開けようとする。
「…剣持、10分外す。」
それだけ、言うと修哉は何食わぬ顔して、席を立ち、重たいドアと悪戦苦闘する小春を何気なく手伝い、先に通し、スタジオを出た。