クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
「ありがとうございました。」
ドアの外で、修哉にも頭を下げて行こうとする小春に「待って」と小声で止めた。
唖然と見上げた小春に頬笑み。
歩き出す。
若干遅れて後を追う。
ちょうどエレベーターが閉まる手前で修哉が開くのボタンを押す。
すっと、乗り込み小春が来るのを待って扉を閉じる。
「ごめんな。
この業界、抜け目ない奴ばっかで嫌になるだろ?」
ぼそっと修哉が話す。
修哉は背丈を合わせるように、壁によそりかかって足を折る。
ぶんぶんと首を振り、ふふっと笑う。
「私がセーラー服とか笑っちゃう」
「嫌。それは別に悪くないと思う」
真顔で言う修哉が可笑しくてまた笑う。
不意に目の前に修哉が手を差し出してきた、何となく合わせると、ぎゅっと握られる。
軽く引っ張っられて、隣に寄り添うほど距離が近くなった。
「これ。後で食べて」
ポケットからおもむろにチョコの箱を差し出す。
「ありがとうございます。」
小さく頭を下げて微笑む。
「何?」
修哉は首を傾ける。
「先輩、昔もよくチョコくれましたよね。
自分じゃ食べないのに、いつも私の為に買ってくれてたんですか?」
ふっと笑って。
「チョコ見せると、小春が笑って駆け寄ってくれるから、いつも常備してたんだ。」
帰り道、廊下や校庭で先輩を見かけるといつもチョコを差し出してくれた。
「なんか私、ご褒美もらえる犬みたい。」
チョコをエプロンのポケットにしまう。
「俺にとってのご褒美だったよ。
小春の笑顔がいつも俺の心を押し上げてくれる」
ふっと笑う。
頬が、赤くなっていくのを感じて目を泳がす。