クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
何も無いと思う。今の自分には何も無い。
なりたかった夢もたたれ。
憧れやときめきや。輝いていた学生時代の自分は全て消えてしまったと。



「小春ちゃん!
 帰りがけに悪いんだけど、お弁当届け忘れがあって、届けてきてくれるかなぁ。
そのまま上がってくれていいから」

「大丈夫ですよ。
 こっちの片付けも終わりましたし」
ノーと言えないお人好しの小春はいつもこう言う時に決まって声をかけられる。

 「ありがとう。助かるわ。
 近くの音楽スタジオなんだけど、
 お弁当の配達数が足りなかったみたいで、
 至急届けて欲しいって」

こちらのミスで数が足りないとなるとご立腹だろうか?
早く持って行かないとクレームになりそうだと気持ちが焦る。
「お客様は怒っている感じですか?」

「大丈夫よ。いつもご贔屓にしてくれてるところだから。」

店長さんが和かに話している様子を見て少し安心した。
美容院でいろいろあってからどうも、人間不信になってしまっていて知らない人、特に男の人にはビクビクしてしまう様になってしまった。

「こう言う時は、小春ちゃんみたいに可愛い子が言った方が丸く収まるのよー」

自分が店長の思惑に当てはまるのかどうか小春としては疑問だけど、他にこの時間に上がる人はいないし、私が行くしか無いと心を奮い立たせた。
< 4 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop