クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

「先輩、お待たせしました。」
10時を回って、
足速に修哉の所に駆け寄ってきた。

「大丈夫だから、ゆっくりきて。」
微笑みながらタブレットをカバンにしまい、
走って、乱れた小春の前髪に手をかけ
軽くなぜて直してくれる。

「お腹すいてる?
近くのレストラン予約してあるから行こう。」

「えっ。わざわざ予約したんですか?」

「小春に逃げられないようにだよ。
予約入れてたら、小春の事だから断れないだろう?」
いたずらっ子みたいな顔で小春を覗き込み立ち上がった。

さすが先輩、よく分かってるなぁ。
敵わないなぁ。
再会してから何度か敵わないって思った事か。

「こっち。」

修哉が手招きする方へ着いて行く。
チラッとコンビニを振り返ると、
片山が両手を大きく振っているのが見えた。

店長来てるのに…よく出来るなぁ。と、苦笑いしながら小さく振り返した。

「小春、なんかアイツと楽しそうに話してたな。」
不意に修哉が拗ねたように言う。

「先輩の事を話してたんですよ。  

先輩が、ロッカーなのかって聞いてくるから急いで訂正しといたんです。」
慌てて言うと、

「もしかして、アイツもロックやってるのか?」
怪訝な顔で聞いてくる。

「詳しくは知らないんですけど、フェスをこよなく愛するロッカーです。
って自己紹介の時に言ってました」

はぁーー。とため息を吐く修哉を不思議に思い聞いてみると、
「俺の周りにはなぜかそういう奴ばっかり集まってくる。」と言う。

「剣持も、元ロッカーで言う事全てが暑苦しくて、ウザい」

ふふふっと笑う。

「剣持さんって、真面目なサラリーマンにしか見えませんでした。」
目丸めて驚いた。

「慣れ慣れしくて、ウザい奴は気を付けろ。
絶対ロック好きだから。

ところで小春は俺の事何て言ったの?」

えっ。と見てから

「先輩は、どっちかと言うとピアノが凄く上手で、クラシックの方が好きだと思いますって言っておきました。違いました?」

「まぁ。確かに。」

そう言って、また手を目の前に出してきたので、反射的に手を合わせるとぎゅっと握って、 
「俺はクラッシックより、小春の方が好きだけど」
と呟く。
ドキンとして、慌てて目を背ける。

「アイツ。…小春はツンデレだって言ってた。お前が小春を語るなって言っといて。」

先輩が甘すぎる。
恥ずかし過ぎて、手に汗がかきそう。
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