クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
「お待たせしました。

新聞の勧誘かなにか来てたんですか?」

前にも新聞屋さんが来て断れずに取ったことがあったなぁと思い聞いてみる。

「また、後で教えるよ。」
修哉は曖昧に返事をして車を走らせた。

駅前まで車で行き、そこからは小春の願い通り電車に乗る。

今日の小春の服装は初夏らしい薄手の紺に白い花柄の半袖ワンピースに長袖薄地の白いカーテガンを合わせた。
髪型はバレッタで一つにまとめ、うなじが眩しい。

「小春、可愛いな。ワンピース似合ってる」
電車に乗って早々、
修哉が独り言の様にぽつりと言った。

「ありがとうございます」
小さくお礼を言う。

土曜の午前中と言うこともあり比較的車内は空いていたが、すぐに降りる為、椅子に座らずドアの角付近に立つ。
その前を護る様に修哉が立つ。

2人は学校の帰り道もこんな風に一緒に帰ったなぁと思い出す。

同時に微笑み合う。

「なんか懐かしいですね。中学の頃を思い出します。」

修哉も頷く。

「先輩とまた一緒に電車に乗れるなんて、思っても見ませんでした。」

嬉しいな。と素直に思う。

「あの頃に戻れたらいいのに。」
思わず呟いて照れ臭くて、窓の外に目にやる。

修哉は寂しく思う。 
きっと小春にはあの頃の俺しか見えてないのかもしれない。今の俺を見てほしい。
でも今の自分の事まだ何も話せてないな、小春の事となると、臆病過ぎだろ俺。
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