クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
9 小春の決意
「えっ!先輩、あっ。修哉さん意地悪です」
唇を尖らせて怒った顔をする。
そんな顔しても、可愛いだけなんだが。
「せ、修哉さんの弱点って何ですか?
いっつも完璧で、お酒にも強いし何か一つぐらい苦手なものとか無いんですか?」
お酒の力も手伝って普段聞きたくて聞けない事を思わず聞いてしまった。
「弱点…結構あるだろ?
俺そんな完璧人間じゃ無いし。ほら、朝弱かったり…」
「そんなの全然です。弱点になりません」
頬を膨らませて怒る真似をする。
「…それに、小春に嫌われたくなくて自分の事あんまり話せないでいる」
小春の頬を撫でながら、修哉が小声で呟く。
私は、どんな先輩だって嫌いになんてならないよ?もっともっと先輩の事知りたいのに。
「私、どんな話を聞いても先輩の事嫌いになんてなりませんよ。
…触れられても怖く無いのは先輩だけですから」
撫でられている手に自分の手を重ねてみる。
頬から離れた先輩の手を両手でぎゅっと握る。
「ちょっとずつでいいので、先輩の事話してほしいです。今だったら何でも受け止める自信があります。」
修哉は目を逸らして、口元を片手で隠し、参ったな、と呟く。
お酒のせいか、目が潤んでいる小春はいつも以上に魅力的だ。
「…俺の昔の話はちょっと重くて、
でも、このまま話さないのは卑怯だと思うから、また酒が入って無い時に話すよ」
「絶対ですよ。
私はもっと先輩の事。知りたいんです」
今の何も無い私の事を受け止めてくれたんだから、今後は私が先輩を受け止めてあげなくちゃ。もっと、心を開いてほしいから
「小春、さっきからまた先輩に戻ってるんだけど?それわざと?」
先輩がニコッと笑って言った。
あっ。気を抜いてたら無意識に先輩呼びに戻っちゃった。
先輩の手から手を離し慌てふためく。
「家に帰ってからが楽しみだ」
いじめっ子みたいな顔して笑う。
なになにちょっと怖いんですけど…。
「そろそろ帰ろう。」
「…はい。」