クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
話の途中で注文を取りに女将さんが来たので中断する。
修哉さんはアジフライ定食、
私は迷ったあげく女将さんお勧めの天ぷら定食を注文する。
ご飯はもちろん小盛りでお願いした。
「食べれなかったら修哉さんも手伝って下さいね。」
「だめ。
小春はもっとちゃんと食べるべきだ。少食過ぎて心配になる。」
「世の中の女子はこんなもんですよ」
「世の中の女子はどうでもいいけど、小春はもっと食べるべきだ。」
修哉さんが真顔で言うからちょっと怖い。
「…努力はします。」
「あの…さっきの話しですけど、
先輩が何か言ってくれたから仕返しされなかったんですか?」
「仕返しって何?
呼び出されて怖い思いしたのは小春だろ?」
「私、結構怒らすような事言っちゃって、
怖くなって急いで逃げたんです。」
修哉さんが笑って言う。
「だから、
急いで行ったのに小春が居なかったんだ。
何て言ったの?」
「…内緒です。
修哉さんは先輩達に何て言ったんですか?」
「…忘れた。」
ふふふっと笑う。
「あの頃、ずっと私だけが好きなんだって、叶わない片想いだと思ってたので、
まさか助けてもらってたとは思いも寄らなかったです。」
「好きだったよ。
多分、初めて会った時から、ずっと。」
ドクンと心配が跳ねる。
そんな風にはまったく思えないくらい、いつも感情も読めないくらいクールだったから、あの頃の私に教えてあげたい。
「そんな風にはまったく見えなかったです。」
「あの頃は俺もいろいろあって、
素直じゃなかったからな。
生きることさえ無意味に思えてたし。」
修哉さんが苦笑いする。
「今は、
今はそんな風には思ってないですよね?」
泣きそうになる。
「そうだな。
小春にもう一度会いたいって思いだけでここまで来たけど、
それが俺の生きる道しるべだったのかもな。」
修哉さん優しく笑って、私が机の上にぐっと握りしめていた手をそっと大きな手で包んでくれる。
「今は、まだちょっと話す自信がないけど、小春のいろいろが解決したら
ちゃんと話すから。」
聞きたい。
修哉さんの事をもっとちゃんと知りたい。
こんな私で良ければ支えになりたい。
「いつか話せる日が来るまで待ちますから。」