クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
決別の日
次の日。小春は朝から緊張していた。
目覚めたらいつの間にか隣に修哉さんが寝てる。いつ帰って来たのか分からないが、気づけば抱きしめられて寝ていた。
起こさないように、そぉっと背中に回っている腕を外そうとする。
抜け出せると思ったとたん、ぎゅっと腕に力が入って抱きしめられる。
おきちゃった?
「お、おはようございます…」
慌てて修哉さんの顔を見上げるが、目は固く閉じられている。
あれ?まだ寝てる?昨日も遅かったのかな?
もう一度抜け出そうと試みる。
「…おはよう。」
ビクッとしてもう一度見ると修哉さんも目を開けて微笑む。
「起こしちゃいましたか?まだ、早いので寝ててください。今日はタクシーで行きますから。」安心させるように微笑んでみせる。
「こんな日も、小春は真面目に仕事に行くんだな。」
頭をヨシヨシされくすぐったい。
「修哉さんは剣持さんがお迎えに来るまで寝ててくださいね。私は大丈夫ですから。」
静かに言って離れようとする。
「俺が大丈夫じゃない。送迎するから大人しくされてて。」
さっきより強い力で抱きしめられて身動きが取れない。
「修哉さん。でも支度しないと朝ごはん作れなくなっちゃう。」
慌てて言うけど、びくともしない。
「大丈夫。昨日、朝食頼んどいたから届けてくれる。それまで後30分はこのままで。」
う〜ん。いつの間にか用意周到。
これは言う事を聞いといた方がいい感じだな。観念して体から力を抜いて修哉さんに寄り添う。
「小春、週末どこか行こうか?行きたいところある?」
「旅行って事ですか?」
「うん。どこでもいい。やりたい事、行きたいとこ2人で行こう。」