財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
一、憧れの人の恋人
寒さが少しずつ和らいでいき、そろそろ春の気配がやってきそうな二月中旬。

 私、()( ゆき)()()は友人ふたりと、代官山の洋風居酒屋に集まった。

 対面に座る( はら)()( ゆう)()()()( まさ)( のり)とは高校からの付き合いで、私立大学生の今も学部は違うけれど変わらず仲よくしている。彼らは高校三年から交際を始め、かれこれ四年以上と長い。

 高校生の頃、顔を合わせると加茂君は憎まれ口などで侑奈をからかっていた。『侑奈も加茂君もお互いが好きなんでしょう? 付き合っちゃえばいいのに』と勧めたのは私で、それからふたりは恋人同士に。

 昔話はさておき、あと二週間ほどで私たちは大学を卒業する。卒業式まで大学へ行く必要もないので、ふたりと顔を合わせるのは今日が最後になる。

 ふたりはそれぞれ大阪の別企業に就職が決まり、卒業後すぐに向こうで同棲を開始するので準備も大変そうだ。

 仲がいいふたりに当てられっぱなしで、彼氏などいたことのない私 は正直うらやましい。

 卒業を前にして現在私も多忙だ。わが家は華道名雪流の家元で、幼少の頃から生け花を習い、現在は師範。就職先は名雪流の事務所に決まっており、大学に入った頃からアルバイトをしている。
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