財界帝王は初恋妻を娶り愛でる～怜悧な御曹司が極甘パパになりました～
　紗世に会うことで、久しぶりに気分が高揚している。

　ロビーでは卒業生たちが立ち止まり話をしたり出口に向かったりと、人の波が切れないが、ふと視線を動かした先にベージュの薄手のコートを着た紗世を見つけた。

　俺はソファから腰を上げ、紗世の元へ歩を進める。

　彼女は透明感のある綺麗な顔を緩ませて、迎えに来た俺に礼を言う。紗世の背に手をあて、ガラスの扉の向こうに停車中の車へ案内した。

　パーティーが終わったばかりで腹を空かせているのか気になり尋ねると、彼女は俺との食事を楽しみにしていたのでほとんど食べなかったと言った。

　今日の紗世はいつもと違う雰囲気のように思える。髪形やメイクといったものではないが、それがなんなのか俺にはわからない。

　とにかく彼女が今日を楽しみにしていたことがうれしい。

　最高のもてなしをしてくれる湾岸エリアの五つ星ホテルの地下駐車場に車を止め、紗世を伴い会員専用フロアへ向かった。


　二十階建てのホテルの十五階にある会員専用フロアでは、男性コンシェルジュが待っていた。

「京極様、お待ちしておりました」

　紗世をこのホテルへ連れてくるのは二回目だ。落ち着きのある彼女は、キョロキョロ辺りを見回したりはしない。
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