財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「お久しぶりです。今日は特別な女性を連れてきたのでよろしくお願いします」

 俺はコンシェルジュに車の鍵を渡す。

 今日は見守っていた妹としてではなく、女として紗世を見ている。

「かしこまりました。私どもにお任せください」

 案内をするコンシェルジュに続き、歩を進める。

 うしろに立つ紗世へ振り返ると、彼女は暗い窓を見ていた。

「紗世? レストランへ行こう」

「あ、はいっ」

 彼女がなにを考えているのか気になったが、促してレストランの個室に落ち着いた。

 紗世がコートを脱ぎ始め、俺はそれを引き取ったが、彼女の可憐な姿に息をのむ。

 サックスブルーが彼女の肌の白さをより一層際立たせ、陶磁器のようだ。

 少し気恥ずかしそうな笑みを浮かべる紗世を椅子に座らせ、俺も彼女の対面に着座した。

「イタリアンにしたんだ。違うものが食べたければ変えてもらうが?」

「いいえ。イタリアンは大好きですから」

「そう記憶していたよ。まずはシャンパンで乾杯をしよう。まだ甘めが好きか?」

 二十歳になってからアルコールを飲むようになったが、紗世の好みは甘いものだ。
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