財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
三月中旬に東京で、四月に大阪で名雪流の個展が開かれる。その準備で新年早々から忙しく動いていた。
そこへ注文していたドリンクが運ばれてきた。
「乾杯しようぜ」
加茂君がビールのグラスを持ち、侑奈と私は同じシャンパングラスを掲げる。オレンジジュースの入ったシャンパンベースのミモザというカクテルだ。
「かんぱーい。ふたりとも、こっちに戻ってきたときは連絡してね」
親友たちが大阪へ行くのをだんだんと実感してきて、急に寂しさに襲われる。
「もちろんよ。絶対に連絡するから」
「名雪もいい加減彼氏見つけろよ」
加茂君の言葉に、侑奈もコクコクと頷く。
「そうよ。この四年間、雅則が紗世に何人合わせたと思うの?」
そう言って、侑奈は両手の指を一本ずつ折りながら紹介した男の子の名前を口にし始める。
「そうだ! そうだ!」
加茂君も真面目な顔つきになり、ふたりに過去をほじくり返されて気まずくなってくる。誤魔化すように色素の薄いブラウンのゆるふわにウェーブのある髪のひと房を持って、目の前に持っていく。
「だって、恋人として見られなかったんだもん……」
「大学じゃ、紗世は高嶺の花って言われているものね。誰とも付き合わないって有名だったわ」
「だよな。名雪は理想が高いんだよ」
「紗世なら理想が高くたって許せるわよ。わが校のミスコンに推薦したかったのに、頑として譲らなくてさ。断られても強引に推薦すればよかった。絶対にグランプリ取っていたはずよ」
「もう、そんなに褒めてもなにも出ないからね。ほら、食べよう。冷めちゃうよ」
運ばれてきたときはぐつぐつしていたグラタンの上のチーズが、固まりかけている。
私たちは自分のお皿にそれぞれよそい、食べてはグラスに手を伸ばした。
そこへ注文していたドリンクが運ばれてきた。
「乾杯しようぜ」
加茂君がビールのグラスを持ち、侑奈と私は同じシャンパングラスを掲げる。オレンジジュースの入ったシャンパンベースのミモザというカクテルだ。
「かんぱーい。ふたりとも、こっちに戻ってきたときは連絡してね」
親友たちが大阪へ行くのをだんだんと実感してきて、急に寂しさに襲われる。
「もちろんよ。絶対に連絡するから」
「名雪もいい加減彼氏見つけろよ」
加茂君の言葉に、侑奈もコクコクと頷く。
「そうよ。この四年間、雅則が紗世に何人合わせたと思うの?」
そう言って、侑奈は両手の指を一本ずつ折りながら紹介した男の子の名前を口にし始める。
「そうだ! そうだ!」
加茂君も真面目な顔つきになり、ふたりに過去をほじくり返されて気まずくなってくる。誤魔化すように色素の薄いブラウンのゆるふわにウェーブのある髪のひと房を持って、目の前に持っていく。
「だって、恋人として見られなかったんだもん……」
「大学じゃ、紗世は高嶺の花って言われているものね。誰とも付き合わないって有名だったわ」
「だよな。名雪は理想が高いんだよ」
「紗世なら理想が高くたって許せるわよ。わが校のミスコンに推薦したかったのに、頑として譲らなくてさ。断られても強引に推薦すればよかった。絶対にグランプリ取っていたはずよ」
「もう、そんなに褒めてもなにも出ないからね。ほら、食べよう。冷めちゃうよ」
運ばれてきたときはぐつぐつしていたグラタンの上のチーズが、固まりかけている。
私たちは自分のお皿にそれぞれよそい、食べてはグラスに手を伸ばした。