財界帝王は初恋妻を娶り愛でる～怜悧な御曹司が極甘パパになりました～

　それほどアルコールには強くないので、カクテル一杯とグレープフルーツサワーを二杯飲んでふわふわしている。

　時刻は二十二時になろうとしている。そろそろお開きだ。

「紗世、大丈夫？　家に泊まってく？」

「大丈夫、大丈夫」

　文京区にある自宅までは、電車で乗り換えはあるもののすんなりいけば四十分ほどで着く。

　洋風居酒屋は代官山の駅から徒歩十分ほどの隠れ家的な立地にあって、恵比寿駅からもそれほど遠くないので、そこから帰ろうと思っている。

　裕福な家に生まれた侑奈は、実家が東京にありながらも、代官山のマンションを借りて住んでいてひとり暮らしなので、これから加茂君がお泊まりするはず。

「いいんだよ？　雅則は帰るから。ね？」

「お、おう。気にしないで泊まれよ」

　話を突然振られた加茂君は侑奈の話に合わせるが、本当のところまだ一緒にいたいのだと思う。

「ううん。明日、朝一で用事があるから。あ、遠慮じゃなくて、本当のことだからね」

　会計を済ませて外へ出る。

　二月の夜はまだまだ寒くて、飲んで温まった体が急に冷えてくる。