財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 京極さんの結婚秒読みの記事がずっと重くのしかかっていた。

「……お母さん、私……我妻社長とのこと、考えてみようと思うの」

 つらくて口にするのもやっとだった。

 母は「え?」と目を見開いた。

「……いいの?」

「うん。ちゃんと会って、我妻社長のことを知ろうかなって」

 無理強いはしないけれどホッとしている母の様子に、やはり私が結婚するのが一番良い解決なのだと思った。

「だから、お母さんは体を治すことだけを今は考えてほしいの」

「紗世……わかったわ。二、三日ゆっくりさせてもらうわね」

「そうして。じゃあ、夕飯はお粥でいい?」

 立ち上がって、壁にかかっている時計へ視線を走らせる。もう十八時になろうとしていた。

「自分で作るわよ」

「いいの。お母さんみたいにおいしく出来ないかもしれないけど、作らせて」

 母の元を離れ、キッチンへ足を運んだ。
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