財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「結婚を前提にと話を持って来るくらいなのだから、紗世さんを好きに決まっています」

「数回しか会っていなのにそんな風に思えるのかな……」

「あります、あります。絶対にひと目惚れですよ」

 工藤さんがにっこり笑ったとき、電話が鳴り彼女が受話器を上げた。



 その夜、お稽古の生徒さん五人を送り出し、そろそろ事務所を出ようとしたとき、スマホが鳴った。

 エプロンのポケットから出して見えたスマホ画面の〝京極さん〟の文字に、慌てて通話をタップする。

「も、もしもし、紗世です」

《今大丈夫か?》

 京極さんの心地良い低音の声に、早くも鼓動が高鳴ってくる。

「はい。大丈夫です」

《食事の約束だが、今週の土曜日の夜はどうだろうか?》

 京極さん、約束を覚えてくれていたんだ……。

 今週の土曜日には大学の謝恩パーティーが昼間あるが、夜は友人たちから誘われても断れば問題ない。

まだ決まっていない友人たちと食事よりも、京極さんに会いたい気持ちの方が大きかった。

「昼間は二時から大学の謝恩パーティーですが、夜は大丈夫です」
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