財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「わかった。あ、私はこっちだわ。侑奈、加茂君、またね。私も大阪に遊びに行くから」

「ああ。気をつけて帰れよ。卒業式にな」

「紗世~、本当に寂しい。気をつけてね」

「私も寂しい……じゃあ……卒業式に!」

 親友ふたりと別れるのはつらい気持ちに襲われたが、もう帰らなければならず、にっこり笑って手を振る。

 ふたりは「また」と言って、私と離れて歩き始めた。

「はぁ……」

 侑奈と加茂君に別れるのもつらかったが、さっきの京極さんのことで胸が痛かった。

 ずっと憧れていた人が女性と一緒のところを目撃したら、ショックを受けるのは仕方ないと思う。

 彼は二十九歳で、二十二歳の私とは七歳離れている。亡くなった親友の妹だから私を気にかけていただけ。京極さんにとって私は妹のような存在なのだろう。

 あんな綺麗な女性が恋人だったなんて……。

 先ほどの顔を寄せたふたりのシーンが頭から離れず、とぼとぼと恵比寿駅に向かって足を運んでいると、少し先で車が止まるのが目に入る。

 あの車は……。
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