財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 紗世は俺を見てビックリした顔をして、少し手前で立ち止まる。

 あのふたりと別れたのだから帰宅するのだろう。

「なにしている? 乗れよ。送っていく」

 助手席のドアを開けて待つと、紗世は近づき無表情で口を開く。

「遠回りになるので、送らないでいいです」

 彼女が遠慮がちなのはいつものこと。少し強引に言うと従うのも知っているので車内へと促す。

「……ありがとうございます」

 運転席に着き、ウインカーを出して後方車に注意を払い車の波に合流させた。

「代官山で飲んでいたのか」

「はい。友達の自宅がこの近くで」

「一緒にいた男女?」

「高校からの友人で大学も一緒なんです。ふたりは付き合っていて」

 友人と聞いて安堵するが、あの場に彼氏がいなかっただけかもしれない。

 紗世に彼氏はいなかったのか?

「え? 彼は……いないです」

「それはすまない。大学生だからいると思ってたよ」

 ホッと胸を撫で下ろしながら、口元を緩ませた。

「大学生でも全員がいるわけじゃないですよ」

「そうだが、紗世は綺麗だからいてもおかしくない」
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