夏は愛と青春の季節


夏の朝は特別お気に入りだ。



今日は私の好きな夏の朝だ。窓枠に手をついて空を見上げた。澄んで現実味のない晴天。昨日の雨が嘘みたいに晴れている。


ずーっと息を吸い込んだとき「うええ! うそ!」と後ろの方で声がした。


ビクッと肩を震わせ振り返ると、入口で大きく欠伸をして涙目になっているクラスメートの三坂さんがいた。


いつも教室の真ん中で笑っている華やかな女の子。だけど今日は自然な感じだった。


少し間を置いて、ああ、と思い当たる。


お化粧、してないからだ。眠そうな二重が不思議そうに私を見つめている。


「いつもこの時間にきてんの?」


三坂さんは、いつも自分の友達に話しかけるみたいに私に話しかけてくれた。


「うん。朝が好きだから」


案外、私もかたくならずに話せていることに驚いた。

2人きりだからだろうか。

澄んだ空気が、普段ある私たちの壁を薄くしてくれているような気もした。


「おばあちゃんみたいだ。うちのばあちゃんも、朝6時から集会場前の公園でラジオ体操してるよ。
私もいずれああなるのかなと思ってたけど、意外と近くにその領域に達してる人がいたわけだ」


まだ寝ぼけているのか、舌っ足らずで話している。三坂さんはまあまあ雑に鞄を机の横にかけて、机の中から問題集を取りだした。


「三坂さんはなんで、こんな時間に?」


私も自分の席に腰を下ろした。


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