夏は愛と青春の季節



まあでも、今日は嬉しい事があったので、そんな挑発は痛くも痒くもない。

せっかく三坂さんのことを話そうと思って走ってきたけど、先生がいじわるするのでやめにする。


これは自分の中だけで暖めておこう。


「そうだ、葉倉くん。そろそろ休憩行ってきてもいいよ」


伸びをしながら先生が言った。


「それじゃあ、お昼頂いてきます」

充さんはこちらに一瞥をくれ背中を向けた。



一瞬、充さんの瞳が私を捉え、時が止まったように私は動けなくなった。
戸惑いのような、それでいて冷たい瞳が残像となって離れなかった。


なんというか、図書館出会った時やスーパー出会った時のような柔和な雰囲気ではない充さんだなと思った。




先生は充さん出ていった扉の方を眺めていて「なんか悪いことしちゃったなあ」とぽつり呟く。



「え、先生何したんですか」


「何かしたってわけじゃないんだけどね。露骨だったな葉倉くん。さすがの鈴城さんも気づいたか」


さすがのって、私がものすごく鈍感みたいに言ってくれる。



「あきらかに様子がおかしかったから。気になって」


「追いかけてみたら? 何かわかるかも」


意味深な助言だけすると、先生は何食わぬ顔で机に向かった。


「ほら、僕なんかにかまけてないで。見失っちゃうよ」


困った。どうやら私だけがこの状況を理解していないらしい。

私は先生と扉を見比べたのち、パタパタと廊下へ出て充さんの姿を探した。



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