夏は愛と青春の季節
充さんの授業は丁寧で私たちが飽きないように構成され、黒板の字もお手本のようにきれいだった。
そうして数週間の研修だというのに完璧に生徒たちの心を掴んでいた。
はっきり言ってしまうと普段より賑やかな授業だったため、後ろで見守っていた先生はちょっとしょんぼり肩を落としていた。
充さんの授業を受ければ、なるほど先生が言っていた充さんの印象についても納得がいく。
この部屋にいる生徒達が耳を傾け板書する。それは人を魅了する事に長けているように感じた。
彼はたった今もクラスの女の子に囲まれ、困り顔ではにかんでいる。
ここ最近たびたび目撃する光景だった。
人の群れの中心には充さんがいたし、決まって私に助けを求めるようにじぃっと見つめてくるのだった。
もちろんどうしようもないので、ふいっと窓の外へ視線を背けてしまって、それからちょっと充さんと顔を合わせずらくなっている。
人だかりのできている教卓を避け、私は離れの校舎にある図書室に向かった。