夏は愛と青春の季節
図書室はそっと扉を開けると締切られていたせいか、紙とインクの香りが鼻を掠めた。
誰もいない静寂が私を迎える。
放課後をここで過ごすことになったのも、図書館に行くことで充さんと鉢合わせてしまうかもしれないからだった。
女の子に囲まれる充さんを見てしまったばかりに、私は少しばかりの寂しさと嫉妬のようなものにひどく戸惑って、合わせる顔がなくなってしまった。
ああ、やだやだ。何やってるんだか、充さんもおかしな態度の私がさぞ不思議がっているだろう。いや、そもそも私のことなど眼中に無さそうだな。
それはそうと案外図書室も落ち着くもんだなあと、窓際のテーブルに本を一冊持ってきたが、珍しく読む気が起きずにうとうとしてきた。
自分の呼吸音でよけい眠気がおそってくる。
5分だけ、5分だけと言い聞かせて私は意識を手放した。