夏は愛と青春の季節
充さんが戻ってくるまで昇降口の周辺をふらふらと歩いた。すると、ふと私が通っていた小学校を思い出した。
そこは昇降口の向かいにあった中庭のことだった。
クラスの子供たちは大きなガラスのスライドドアを開けて上履きのまま勢いよく飛び出す。
飛び石にひょいひょいと飛び移って遊んでいた。
雨上がりは滑りやすくって、遊ぶのを禁止されていたけれど、私はこっそり中庭で校長先生が飼っている金魚を眺めていたのを覚えている。
雨ざらしになってもなお逞しく生きている金魚を、すごいなあと感心しながらも心配していた。
その頃から私は友達がいなかったのだな。
と、なぜ私がそんなことを思い出したのかというと、昇降口の隣。
勝手口の前に泥だらけの上履きが一足揃えて置かれていたからだ。
中庭で遊んだあとの子供たちは、鬼ごっこをして遊んでいることが多かったから
鬼から逃げるのに必死で飛び石では無い地面をやむなし、と走り回っていたので昼休みが終わる頃には上履きが泥んこになっていたのだった。
そんな記憶と結びついたのだけれど、高校生にもなってこれ程にも上履きが汚れるものなのだろうか。
まじまじと観察していると、
「なにしてんの」
勝手口に男子生徒が立っていた。