君色の空
――亜美――

「ねぇ、君………いや、…亜美さんは…


恋人はいるんですか?」


不意に、蓮がそんな事を聞くものだから、私は驚いた。



……恋人は、あなただったんだけどな…蓮…。

「いたけど、別れちゃった。」

そう私は答えた……



そのあとから、蓮は一言も喋らなかった。




…蓮……



どうして、そんな悲しい顔をするの…?



…少しでも、記憶を失くす前の自分に嫉妬してる?


…少しでも、記憶を失くす前の自分に怒ってる?



…私は…



記憶を失くす前のあなたも、今のあなたも好き……



こんなにも、好きなのに…



運命って…


現実って…



どうしてこうも、残酷なの…?



…私は、あなた…蓮の傍にいてはいけないの…?

ねぇ、神様……教えてよ…


どうして、私と蓮を引き離そうとするの…?


どうして、辛いことばかり起こるの…?

…もう嫌…



蓮さえも、こんなことになってしまうなんて…。



もううんざりよ……



私が女優何かにならなければ…


千秋と出逢う事も、千秋に恋をする事も…



千秋を失う事もなかった……



私があの日、あの場所へ行かなければ…


蓮と出逢う事も、蓮に恋をする事も…


小さな尊い命を失うこともなかったのに……



私、何かした…?

ねぇ、神様……



お願いがあるの…


蓮の記憶を基に今すぐ戻して……




お願いだから……。



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